F&Aレポート
「スピーチ」は、頭と心を使う作業である〜あがり症「みんなに見られている」恐怖を認知行動療法で改善する
前回のレポートでもお伝えしましたが、アメリカの大学では何を専攻しようと必ず取らなければいけない必須教科があります。その教科は、就職の際にかなり重要視されています。アメリカでは大学を卒業してすぐに就職することはありません。数ヶ月の「インターン(実習的勤務)」期間を経てから、能力、個性、お互い(組織と個人、または職場の雰囲気と個人)の相性を見て判断してから、就職できるかどうかが決まるのです。
そう「かなり重要視されている」教科というのは「スピーチ」です。新聞などに掲載される求人情報にも、求める人材は「コミュニケーション能力の高い人」と、どこの企業も提示しています。
ひとことで「スピーチ」といっても色々あります。自己紹介、説明、説得、プレゼン、ユーモア、声の出し方、話し方、話の構成など、それらすべてが「スピーチ」という教科に集約されているのです。そして、コミュニケーション能力とは、それらのスピーチ力を駆使して、周囲をいかに巻き込むか、どのように表現するか、いかにして他者を理解し、他者と協力し合えるかという、他者との関わり方すべてにおける能力です。
相手が何を欲しているのか、どんな言い方なら受け入れてもらえるか、どんな言葉や表現なら相手に伝わるか、機転を利かせる必要があります。スピーチは、頭と心を働かせる作業です。日本も早晩、どこの学校でも、より実践的で体系的な「スピーチ」を学ぶ授業が行われることになるでしょう。
■あがり症と認知行動療法
認知行動療法とは、認知(ものの見方や捉え方、考え方)に働きかけて、行動を修正、改善していくという心理療法です。あがり症を克服するためのトレーニングの一つにこの認知行動療法がありますのでご紹介します。
(2)お互い相手をしっかり見ます(3分程度)
(3)(2)のときに、自分がどう感じているかを確認してください
なぜなら、視点のベクトルが「見られている」という言葉通り、相手から自分に向かっているからです。自分がどう見られているのかという他人の目が気になるのです。
あがり症を克服するには、この視点のベクトルを逆にしましょう。相手からの目線ではなく、自分の目線、つまり「自分が相手を見ているのだ」というベクトルを強く意識してみましょう。そのためには、ぼんやり見るのではなく、一点を注意してみるようにするのです。たとえば、メガネの特徴や、鼻の形など、特徴を捉えるように見るのです。すると、不思議なことに「見られている」という意識はだんだん弱くなります。「他人から見られている」のではなく「自分が見ている」のです。
最初は1対1で練習して、少しずつ相手の人数を増やしていきながら同様にトレーニングしていくことで、大勢の前に出ても舞い上がることがなくなります。
これが自分自身に集中するというトレーニングになります。「あがる」というのは、自分以外のものに気を取られて集中できない状態をいいます。他人の目や意見、結果や評価など、自分ではコントロールできないものに気持ちが取られて、本来コントロールすべき、自分自身がおろそかになってしまっているのです。とはいえ、頭でわかっていてもすぐに実行できるものではありません。また、どんなに場慣れしていても、「あがり」や「緊張」がまったくなくなることはありません。なぜなら、それらの正体は「欲」だからです。「うまくやりたい」「いい結果を得たい」などの気持ちがゼロになることはありません。「あがり」は正常なことと捉え、どう対処するかの訓練あるのみといえます。