F&Aレポート

F&Aレポート 2015年7月20日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

「おもてなし」はいくら? 〜「おもてなし」を「成果」に結びつけたカリスマ販売員 マネージャー就任2年で売上2倍に

1.「おもてなし」はいくら?
■サービス産業生産性協議会は08年12月、米国滞在経験のある日本人と日本に在住している米国人を対象に百貨店、ファミレス、ホテルなど20種類のサービス業に関して調査。日本人は19種類、米国人は16種類で日本の方が品質が高いと評価した。一方で、時間当たり労働生産性は、経済産業省の通商白書2013に掲載された調査で卸売・小売業は米国に比べ41・5%、飲食・宿泊業は同26.5%にとどまっている。
■日本生産性本部の木内康裕主幹研究員は、質の面で高い評価を受けている日本のサービス業の生産性が低くなっている要因について「日本はサービスの要求水準が高いが、それが付加価値につながっていない。おもてなしにお金を払うことになっていない」と説明。
■質の高いサービス業の存在は日本の強みでもある。世界経済フォーラムの観光競争力ランキング2015で、日本は141カ国中「客の待遇」の項目で1位を獲得。政府は20年までに訪日客を年間2000万人に引き上げる目標を掲げており、観光振興に力を入れる。政府観光局によると、円安の影響もあり、5月の訪日外国人旅行者は前年同月比で49.6%増の164万2000人に達した。
■13年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、滝川クリステルさんがフランス語で行ったプレゼンテーションの中でも、「おもてなし」をキーワードとして使った。日本は2020年五輪・パラリンピック開催を勝ち取り、同年の新語・流行語大賞にも選ばれた。
■安倍首相は3月、都内で行われた日本生産性本部のパーティーで、サービス業について「ホテルでもレストランでも、誰に対してもきめ細かな配慮がなされ、『おもてなし』の精神が行き届いているが、産業としてサービスを眺めた場合、単に『質がよい』というだけでは足りない。質の高いサービスには、それにふさわしい評価がなされ、対価を得られなければ、その事業は持続しない」と語った。(Yahoo!ニュース2015年7月16日)

2.おもてなしを成果に結びつけたカリスマ販売員〜就任2年で売上2倍に
■2013年から広島のデパートにある高級婦人服のショップでマネージャーとして働いているAさんは、就任2年で店舗売上を約2倍に引き上げた実績の持ち主。Aさんは倉敷市出身で以前は岡山高島屋に勤務していたが、未だに当時の顧客がわざわざ広島の同店に来店する。
■あるとき、70代のお客様に「宮内庁の春の園遊会に出席するための着物に代わるドレスを選んで欲しい」とリクエストを受け、ノーカラーのジャケットとドレスを勧め購入いただいた。後に、そのお客様から「園遊会にはたくさんの人が出席するにも関わらず、天皇陛下と紀子様のお二人から声をかけてもらった。それは、Aさんが勧めた洋服がよかったから」と、お褒めの言葉をいただいた。
■Aさんが現在勤務しているショップには、Aさんを含め4人のスタッフがいるが、誰が来店しても皆が接客できるよう情報を共有し、機会ロスを減らす仕組みをつくっている。ラグジュアリーブランドでは、個人の販売員が顧客を抱えていることも多く、お客様がせっかく来店されても、担当者が休憩や不在でいない場合には、お客様はそのまま帰ることも珍しくないのだ。
■また、「既存のお客様の来店回数を増やしながら、新規のお客様にアプローチする」ために、何気なく集めていた伝票作業などを省き、お客様のことを考える時間を増やしたのも売上アップにつながった。
■ 高額商品を買われる同店の顧客は、比較的年齢層が高く、品質の良いものに長年親しんできた“本物がわかる”経験値の高い女性が多い。ありきたりの「おもてなし」の行為や安易なお世辞はすぐに見抜かれて客離れを起こしてしまう。この販売員が信頼に値するかどうかをジッと見定めている感じがある。
■Aさんは、手堅いセレブに「この人なら」というお墨付きを頂くまでは、接遇だけなく、一般教養から会話力に至るまで、どんな情報ならお客様が喜ばれ気づけば休日も本を読んだりして接客のベースづくりをしていることもあるという。
■ただ単に個人プレーとしての「おもてなし」だけではなく、チームとしての「おもてなし」に“心”の働きが伴い、それを表現して伝わったときに「おもてなし」は、はじめて「成果という実」を熟すのかもしれない。(8月末、カリスマ販売員Aさんをアクエリアスリーダーズサロンにゲストスピーカーとしてお招きします)