ボストーク -- Boss Talk --

湊町レター Letter From Minato-machi 2013年4月1日 22
2013/4/7

 冬の寒さを感じる日が少なくなってきたと思ったら、突然の春の到来です。確定申告が終わってまもなく、3月中旬には桜の開花が始まりました。今年の開花で驚いたのは、松山よりも東京の方がずっと早く桜が咲いたことです。4月に入る前には散ってしまうのではないかという勢いで咲いていました。今年は梅、桃、桜が同時に咲いたような変な春の到来でした。

 さて、先月は、デフレとインフレというちょっと難しいテーマに挑戦しました。その後の日本経済、少なくとも株価という面では好調を維持しているようです。しかし、アベノミクスと言われる経済政策の未来は、決してバラ色とは思えません。現状を何とか打破しようという自民党政権の意気込みは良しですが、こんなに簡単に結果が出るとは思えないのです。そこで、今月も改めて、景気について考えてみたいと思います。

 車で松山市内を走ると、かつて市内に点在していた商店街は、大街道・銀天街という中心部を除いて壊滅状態です。ちなみに、東京では、深夜にタクシーに乗っても明かりがついている飲食店はたくさんありますし、商店街も健在です。共通しているのは元気なコンビニだけです。

 この違いは何なのでしょうか?難しいことではありません。客の有無です。では、なぜ松山の店には客がいないのでしょうか?客がいない店、これが不景気の現状です。この点について少し考えてみたいと思います。

 公共工事が大きく減少しました。この結果、建設業は淘汰されました。住宅着工数もバブル期から見ると激減です。海外進出で製造業も淘汰されました。国内から完全に消え去ることはないと思いますが、特に輸出を支えた工場の多くは、国内にはあまり残っていないのが現状だと思います。大きなこの2つの産業が衰退することで、給与の減少や失業を生み、消費活動が停滞してきました。雇用が安定しないため、結婚もできず子どもが少なくなりました。その結果、教育や結婚にかけるお金も減ってきました。自動車も、中型車から軽にシフトしました。比較的元気なのは、介護事業のような高齢者を対象とする産業ですが、この産業は、給与を生むだけで他の産業への波及効果がなく、また高齢者という在庫がなくなれば、教育産業と同じ道を歩みます。

 他にもたくさんあるかもしれませんが、これが日本の不況の現状です。これらの問題を、日銀の金融政策だけで解決できるのか?と言うのが大きな疑問です。

 GDP(国内総生産)と言われますが、これは一つの景気の指標です。国内で一定期間に生産された全ての最終財・サービスの総額とされ、家計・企業・公共の3つの部門から計算されます。しかし、この3つの部門すべてが下向きなのが現在の日本経済です。製造業の国内回帰と言われても、最新の製造設備を海外に設置し、そこで高度な技術水準を維持している会社が、明日から日本に戻って生産再開することが現実的に可能なのか?と考えていけば行くほど、現在の市況に疑問を感じてしまうわけです。

 ただ、従来の工場を建て直して生産を回復させることだけが日本経済の復活とは思えない部分もあります。それはどのような産業の育成なのか?現状分析と合わせて、そのような議論と意気込みが必要な時です。